アトツギの旗手たち
やりたいことでご縁をつなぐー。自ら楽しい働き方を実践。


スイコー 代表取締役社長 増田 純吾さん(41)

 「正直、周りからの評判は気になります。でも評判が良くても悪くても自分が満足できないのであれば、意味はないかと。」と話されたのは、アトツギプロジェクトの本拠地であるコワーキングスペースの経営者である増田純吾さん。「自分がやりたいこと・できること・求められることがイコールならこんな幸せなことはない。でもやりたいことよりできることを職業に選んだり、できないことができるようになったり、いつかは、できていたことができなくなる時もくる。年齢や時代によってやりたいこと・できることは変化していくのなら、働き方や働く場所も流動的でもいいのでは」と達観的に働き方を見つめている。

価値観の形成

「やりたいこともできることもなかったですが、漠然と海外で仕事をしたいなぁと思っていましたね」。東京でwebの映像制作の仕事をしていたが、26歳でUターンし結婚。思い残すこともあったが、帰鳥してよかったと思うことも。新婚半年でガンが発覚、そして転移。治療に8カ月、東京の病院へ定期健診で10年通院した。「ゆっくり浴槽に浸かっている時に違和感があって。東京ではシャワーで済ませていたので、気づかなかったと思います」と振り返る。

「心身ともに元気でないと楽しみ切れない。僕は助けてもらったけど、一緒に弓道をやっていた友人は35で亡くなり、弔辞を読んだ。やりたいと思ったことは全部やりたい」と生死を意識する経験が行動力につながっている。一方で、アイデアや視点も独特だ。倉吉西高で弓道部に所属し、インターハイで全国制覇、大学でも全国一に輝いた経歴の持ち主。「分野を絞れば日本一になれるんじゃないかと思ってなれた(笑)。その成功体験は仕事にも繋がっている気がします」と言う。

新社屋に込めた思い

祖父の純一さんが昭和23年に文具屋を創業。現在、その3代目として会社を牽引している。OA機器やオフィス家具の販売、シニア向けのパソコン教室を展開。「先代の時にOA機器のブームがあって今の会社の規模になったが、伸び悩んでいました」。そんな時、中部地震で社屋の屋根が崩壊し、移転を余儀なくされた。

これを機に、舵を切った。「オープンオフィスというコンセプトで、一つは誰でも来ていただける会社にしたかったのと、もう一つは、これがオフィス?と思われたかったんです」と言い、会社のエントランスにコワーキングスペースを設置。「これまでは既存のお客さんとしか繋がりがなかったのですが、いろんな人と出会う機会が増えました。来月は高校生プロデュースの結婚式が行われます。人のご縁の繋ぎ役になりたい」。会社の理念でもある「喜びの源となる」場として期待している。

自分たちが働く姿や社屋を見て、お客さんの反応も変化。「昔は『いくらくらいで、これが欲しい』と価格の話だったのが、最近は『こういう風にしたい』という言葉が変わって来ました」と手応えをにじませる。

「楽しく働きたい」

楽しく働きたいー。そんな〝らしさ〟は社内の労働環境を変えていくことにも繋がる。シャツ、パンツ、スニーカーといったユニホームを作り、社員ロッカーのデザインからこだわって変更。「まず自分たちが扱う商品のメディアにならなければいけない」と説く。

さらに、会社の事業とは別に、赤瓦に弓道体験場を個人事業としてスタート。「今後、地方で伸びていくのはシニアビジネスか観光しかないと思うんです。インバウンドもどんどん増えてくる。そこを踏まえて自分がやりたいこと・できることは何かと考えたら、弓道でした」。思い立ったらすぐ行動。経営者として大事な部分だ。
「当社のロゴマークの花びら一枚一枚は人。人が繋がっている中心にS(スイコー)がある姿をイメージしたんです」。事業の幅を広げながら、でも根本的に目指したい喜びの連鎖。その源流には増田さんの、自ら楽しむ姿勢がある。
(文・写真 / 藤田和俊)

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